滋賀医科大学小児科血液腫瘍グループ
小児の白血病について
急性骨髄性白血病について
まずはじめに
いったいどこが悪くなる病気ですか?
簡単に言うと血液の中の細胞のどれかが 悪性化して増えていく病気です。
血液の細胞(血球ともいう)は一般的には骨髄といわれる骨の中にいます。
骨髄の中で白血病細胞という悪い細胞が増えてくる(増殖してくる)病気です。
顆粒球(好中球)というばい菌を食べる細胞のもとが悪くなったのが急性骨髄性白血病です。このほかにも同じ系列の白血病の中には赤芽球、単球、巨核球などいろいろな細胞に白血病化がおこるタイプがあります。
急性骨髄性白血病の原因
まだ、よく判っていないところもありますが、
放射能の被爆やある種の薬剤 そして一種のウイルスによる感染などによるといわれます。こどもではまず、薬剤性はありません。
うつる病気ですか?
前の項目にあったウイルスの感染はほとんどすべての人で起こっています。
しかし、一般には、0.003%の人しか発症しません。 逆に言うとうつる病気ではありません 。 なぜ、白血病にかかる人とかからない人がでるのかはまだ良く分かりませんが
このウイルスに対する抵抗力が弱いためだと考えられています。
かかる人の数はどのくらいですか?
およそ10万人の15歳以下の子供に対して1.8人以下くらいです。
日本全国で一年間におよそ100人くらいのこどもたちが発症しています。
急性という意味は?
この急性という意味は:白血病になっている血液の中の細胞が若い段階にあるものだ
ということです。言い換えると、医学的に未分化(分化とは発達してくることだと思って下さい。)あるいは幼若ともいいますが、 血液を造る骨髄のなかで若い方に近い細胞が白血病にかかっている(白血化といいます)ことをあらわします。この白血病細胞を芽球とも呼びます。
慢性白血病では発達した段階の血液細胞(分化した細胞)が白血化しています。
病気の流れとしては 一般的には 急性の方が早く 慢性のほうがゆっくり経過することになります。
骨髄性白血病とは?
血液細胞にはいくつかの種類があります。大きく分けると白血球、赤血球、血小板の3つにわかれます。
このうち白血球はさらに5つにわかれますが、おもには好中球、リンパ球、単球の3つです。
好中球(顆粒球ともいいます)は骨髄芽球(この場合は正常です)という細胞から発達しばい菌を食べたりします。この白血病化が急性骨髄性白血病といわれます。
リンパ球はリンパ腺(リンパ節)の中にいるものとおなじでT型、B型などにわかれます。こどもの急性白血病の約80%は急性リンパ性白血病です。
単球もおなじ骨髄芽球から発達しいろいろなモノカインという血球の刺激物質を出します。炎症にかかわります。急性単球性白血病といいます。
赤血球: これは有名で血液の赤い色は赤血球の中のヘモグロビンという蛋白質に由来します。 もとになる赤芽球が白血病化すると赤白血病といわれます。
血小板:これは数ミクロンのとても小さな血球の一種で出血を止める働きを持っています。血小板を造るもとになる巨核球が白血病化すると急性巨核球性白血病とよばれます。
ほんとうはもっと細かい分類があるのですが、ここでは一般の方向けに簡単にしてあります。
詳しくは一番最後にあります。
症状は?
骨髄の中でどれだけ正常の血液細胞(血球)を造る能力が白血病細胞(芽球)によりおかされて置き換えられるか、によって症状が決まります。
血小板をつくるところ(巨核球という細胞が血小板を造っています)が芽球によってやられてゆくと・・・血小板減少・・・・出血がおこりやすくなります。
すなわち、皮膚の紫斑(出血斑) 鼻血、粘膜の出血斑、月経過多など
好中球(顆粒球)を造るところがやられると感染を起こしやすくなり、よく熱を出します。 易感染性といいます。
赤血球を造るところがおかされると貧血がきます。
また、骨の中で芽球がふえてくると骨の痛みが出ることもあります。
患者さんによっては脳脊髄液(頭のまわりにある水)や睾丸への浸潤などが来ることもあります。
稀ですが、骨に固まりが出来たり、皮膚に浸潤したり眼にくることもあります。
治療法
ダウノマイシン、アドリアシン、ピノルビン、ノバントロン、エンドキサン、VP-16,キロサイドなどという抗腫瘍剤(抗がん剤)が治療に使われます。
患者さんには危険因子といわれるものがあります。
初診時(はじめて病院で診断された日)の白血球数が多いほどよくありません。
成人の白血病はこどもより予後が悪く しばしば、骨髄移植(や臍帯血移植)などが行われますが、小児の急性白血病では必ずしも移植を必要とするほど予後が悪くないことと、移植によりその後の成長が止まってしまう場合もあること、性腺機能が失われてしまう場合もあることから、リスクが高い場合や再発などがないかぎり必ずしも移植治療が全てというわけではありません。しかし、もしもHLAという白血球のタイプが会うご兄弟姉妹があれば移植も一つの治療選択です。
一般化学療法
治療としては 骨髄の中で白血病細胞(芽球)の割合が5%をきることをまず目標にします。
この状態をまず寛解(かんかい)といいます。
そして、この最初の治療を導入療法といいます。
つぎに芽球をさらに0%にするために強化療法をおこないます。
そして、 さらに強化維持療法を反復しておこない
治療終了します。
副作用の問題
副作用としては あまりおおきなもにはありませんが
治療後7ー10日して白血球が減少して感染にかかりやすくなること
よって、感染予防の薬やうがい(可能であれば)などをします。
血小板減少による出血:これを防ぐため血小板輸血が必要になる場合があります。
赤血球減少による貧血:これに対しては赤血球輸血をします。
脱毛しますが、治療が終了すればまた生えてきます。
性腺機能はある程度低下しますが一般に保たれます。
骨髄移植についてはまた、別にお話します。
検査について
白血病の病気の場所が骨髄の中である以上、骨髄検査(よくドイツ語でマルクといっています)は必須です。ちょっと痛いですが
頑張りましょう。
よくなっているかどうかもこのマルク検査で見ます。
リコール検査 子供は脳脊髄液に白血病細胞(芽球)が浸潤してくることが多いので
背中からこのリコールをとるルンバール(腰椎穿刺)をときどきおこないます。
赤ちゃんでもやっていますから、大丈夫です。
採血は残念ながら多分、しょっちゅうあるかもしれません。もうしわけないのですが、血液も大切なバロメーターなのです。主治医の先生はがんばって、お子さんも頑張ったのになかなか、うまくいかないこともあるかもしれません。申し訳ないことです。
採血の後はもまずに10〜15分間くらい押さえておいて下さい。
つらいことや悲しいこともあるかもしれませんが、勇気を持ってがんばって治療してよくなりましょう。
ちいさなかんじゃさんへ
いろいろしんどいこともあるけれどもがんばってよくなろうね!!
保護者の方々へ
わからないことは主治医の先生や血液担当の先生に聞いて下さい
遠慮しないで下さいね。私たちもいろいろ努力していますが、十分でないこ
ともたくさんあると思います。そんなときは本当に遠慮しないでいろいろ、聞
いてください。
滋賀医科大学小児科
血液腫瘍グループ
補遺
急性非リンパ性白血病の分類 ANLL(Acute non〓lymphoblastic leukemia)
この全体をひっくるめて急性骨髄性白血病(AML)という場合もあります。
FAB分類
M0:一見はALL FAB L2の形態のように見えるものがある。MPO、Sudan
Blackは陰性。CD13やCD33などのmyeloid系の抗原は陽性である。
TdT やCD7以外のリンパ系マーカーは陰性である。
免疫電顕ではMPO陽性のことが多い。
AUL:Acute undifferentiated leukemiaの名称を用いているものもある。
M1 AML(acute myeloblastic leukemia with no maturation)
急性骨髄性白血病(未分化型骨髄芽球性白血病)
N/C ratioはALLに比較してやや低い アウエル小体 1本、 顆粒ほとんどなし
type I:核小体は著明、顆粒なし type II:比較的大きく、1-6個アズール顆粒を含む (25%)
M2 AML(acute myeloblastic leukemia with some
maturation)
急性骨髄性白血病(分化型骨髄芽球性白血病)
N/C ratioはALLに比較してやや低い Auer
rod 1本 アズール顆粒が見られる。
t(8;21)(q22;q22) ETO AML1 t(3;21)(q26;q22) (27%)
M3 APL(acute promyelocytic leukemia) 前骨髄球性白血病 azurophilic
granules+++
アウエル小体が多数みられる(faggot cells) DIC 出血を起こしやすい。
t(15;17)(q22;q21) PML RARA (5%)
M3V APL microgranular variant(acute promyelocytic
leukemia)
azurophilic granuleがfineで判りにくい場合がある。
M4 AMMoL(acute myelomonocytic leukemia) 20-80%はmonoblast
myeloblastにはときにAuer rodがみられる。
急性骨髄単球性白血病 (26%)
M4Eo AMMoL with eosinophilia(acute myelomonocytic
leukemia)
M5 acute monocytic leukemia. 急性単球性白血病
M5a:80%の細胞は未熟単球芽球 M5b:80%異常の細胞は単芽球、全骨髄球または 単球 (16%)
M6 erythroleukemia 赤芽球性白血病 非赤芽球系細胞の30%以上が芽球
(2%)
M7 acute megakaryocytic leukemia 急性巨核球性白血病
細胞質bleb, myelofibrosis 電顕的にPPO(+)
(5-7%?) Down症児において比較的多い。
21trisomyを伴う異常が多い。
先天性白血病:生後1ヶ月以内の発症
Down症児に多い。(TAMとは異なるもの)
ANLLが多い。皮膚浸潤が多く見られる。
乳児白血病 AMLが比較的多い。
しかも、MLL gene (11q23)をinvolveしたtranslocationが多く(約45%)、これらの多くはFAB
M4, M5でhyperleukocytosisを示す。
Sorensen PH, et al. Molecular Rearrangements
of the MLL gene are present in most cases of infant acute myeloid
leukemia and are strongly correlated with Monocytic or Myelomonocytic Phenotypes.
J. Clin Invest 1994;93:429-437. FAB M4 8/26 M5 7/26
初発症状:
1)貧血によるもの 顔色不良、易疲労感、傾眠、頻拍
facial pallor, easy fatiguability, lethargy,
2)白血球減少によるもの 感染、発熱
fever(61%), infection
3)血小板減少によるもの 出血;紫斑 口腔内点状出血、月経過多、鼻出血など
bleeding(48%),
purpura
4)白血病細胞の浸潤によるもの リンパ節腫大(50%)、肝脾腫(60%)、腹部膨満、骨痛(23%)、
関節痛、歩行障害、緑色腫(chloroma) 稀に頭痛、睾丸腫大、皮疹,
歯肉腫脹
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